NISHIO Hirokazu[Translate]
なぜ煙が出るのか
炭火に薪を追加しても燃えない、煙が出る、科学的にはどういう現象?nishio
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「低温の燻焼smoldering)」が起きていて、揮発分は出るのに燃える条件(温度・酸素)が足りず、未燃の粒子やタールが煙になって出ています。
吸熱で温度が落ちる
薪が冷たい/湿っていると、まず乾燥(水の蒸発潜熱 ≈2.3 MJ/kg)で大量に熱を奪う。
次に熱分解乾留)が始まるが、これも基本は吸熱。炭床の温度が下がり、炎が起きにくい。
酸素が足りない
炭は酸素不足だと CO を多く出す(C + 1/2 O₂ → CO)。この CO も温度が足りないと燃えきらない。
煙の正体(未燃物と微粒子)
低温の熱分解で出たタール滴、未燃の炭化水素、すす(微小炭素)、水蒸気、有機酸などが、火炎に入らず凝縮エアロゾル=白/灰色の煙として見える。
いつ「炎」になるか
十分な温度(薪表面が着火温度域に達する)と十分な酸素(対流・ドラフト)が同時に満たされると、揮発分に拡散火炎がつき、煙は急に減ります。

炭火は何度?nishio
赤く熾っている炭の表面はだいたい 600–900 ℃。GPT5
送風や強いドラフトがあると1000–1200 ℃まで上がり得ます。
その温度で木材が乾留されてもガスに火がつかない?nishio
木の乾留ガスはまず炭表面の還元雰囲気(酸素ほぼ無し)で生まれます。GPT5
可燃下限(LFL)はおおよそ H₂ 4%, CH₄ 5%, CO 12.5%(v/v, 空気中)
発生直後は極端に燃料過濃で燃えません。
空気を巻き込むと可燃域には近づくが、室温の空気で希釈されて温度が数百℃スッと下がり、自着火温度(例:CO ≈609 ℃, CH₄ ≈537 ℃, H₂ ≈500–585 ℃)を割って失火。
なるほどねnishio

拡散火炎とはnishio
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拡散火炎(diffusion flame/非予混合火炎)は、燃料と酸素(空気)が最初は混ざっておらず、界面で拡散しながら混ざった“その場”で燃える火です。ろうそく、空気穴を閉じたバーナー、薪や炭の上で立つ炎、油のプール火災などが典型例。
拡散火炎:混合が遅く、混合(拡散・渦混合)が燃焼速度を律速。界面の当量(ストイキ)面に薄い反応層(フレームシート)ができる。
燃料リッチ核(ガス発生源の近傍)—O₂が乏しい
反応層(フレームシート)—混合比が当量になる薄膜で主反応が進む
外側の酸化帯—CO/H₂/すす等の二次酸化
反応層の局所温度は、当量近傍なら理論火炎温度 ~ 1700–2100 ℃(燃料による)に近づくが、実際は放射・希釈で低下。
薪・炭の現場では、ガスが当量面で≳800–1000 ℃まで上がり、十分に酸素が巻き込まれると拡散火炎が安定して立ち、煙が減る。混合不足や冷却で600–800 ℃域だとタール酸化が追いつかず白/黄煙になりやすい。
なるほどね、炭火の低い側600℃だと分解してガスは出るがそれが炎になってくれない、800~1000 ℃とかになるとよいnishio
コツGPT5
炭床がさくら色(≈700–800℃)以上のときに追加。
一度に少量(体積で現状の10–20%)→周縁で予熱→中心への二段投入。
ベストタイミング: 置いた枝が1–2秒で着火する状態。
これが大事そう、1本入れて着火するかどうか見て、まずそうなら引き上げようnishio
確認しないでたくさん入れると温度が下がってしまう
周縁で30–90秒“炙って乾かす”→水蒸気が止んだら立てかけて炎先端にかぶせる。
1–2本ずつ、格子状に置いて隙間を作る。太い枝は割って比表面積↑。

木を炭火に乗せたときの温度帯
〜100 ℃:乾燥(自由水の除去)
H₂O(l) → H₂O(g)(蒸発潜熱 2.26 MJ/kg)
150–200 ℃:脱酢酸など(へミセルロース初期分解、酢酸やメタノール発生)
200–260 ℃:へミセルロース熱分解(CO₂、酢酸、軽質ガス)
240–350 ℃:セルロース熱分解(レボグルコサン=タール主成分、CO、CO₂、H₂、CH₄)
280–500 ℃:リグニン熱分解(フェノール類・芳香族タール)
300–400 ℃:木材表面の自己着火温度帯(条件依存)
400–600 ℃:チャー(炭)酸化が優勢、赤熱開始
≥600–800 ℃:揮発分・CO/H₂の二次燃焼が進み炎が安定(タール分解も進む)
≥700–900+ ℃:タール熱分解・すす酸化が進んで煙が減少
目視目安:暗赤550–650 ℃、さくら色730–800 ℃、オレンジ930–1000 ℃

代表的な化学反応(25 ℃基準・標準反応熱)
乾燥・熱分解(吸熱・発煙源)
乾燥:H₂O(l) → H₂O(g) +40.7 kJ/mol(= 2.26 MJ/kg)
木材熱分解(模式):(C₆H₁₀O₅)ₙ → C_(s) + タール + CO + CO₂ + H₂ + CH₄ + …(吸熱、生成物は条件依存)
表面(固体)での炭/木炭の反応
完全酸化:C + O₂ → CO₂ −393.5 kJ/mol
不完全酸化:C + ½O₂ → CO −110.5 kJ/mol(酸素不足で増える)
ブドワール反応:C + CO₂ → 2 CO +172 kJ/mol(強い吸熱→床温低下)
水性ガス反応:C + H₂O(g) → CO + H₂ +131 kJ/mol(吸熱→床温低下)
気相での二次燃焼(炎側)
COの酸化:CO + ½O₂ → CO₂ −283 kJ/mol(**約≥600 ℃**で速くなる)
H₂の酸化:H₂ + ½O₂ → H₂O(g) −242 kJ/mol
メタンの酸化:CH₄ + 2O₂ → CO₂ + 2H₂O(g) −802 kJ/mol

自己着火・燃焼の温度目安(条件で変動)
木材表面:約300–400 ℃
CO:約609 ℃
H₂:約500–585 ℃
CH₄:約537 ℃
タール蒸気:組成依存だが**概ね≥300–500 ℃で着火しやすく、≥700–800 ℃**で分解・燃えやすい

なぜ「薪を足すと煙る」のか(数値感)
含水20%の薪1 kgだと、水0.2 kgを100 ℃まで昇温(≈63 kJ)+ 蒸発(≈451 kJ)で≈0.51 MJを奪う。
さらに木質部(≈0.8 kg)を25→300 ℃へ上げるだけで≈0.33 MJ(比熱≈1.5 kJ/kgK仮定)。
合計**≈0.8 MJ以上の吸熱で炭床温が600–800 ℃域から落ちやすい**。
温度が**<600–700 ℃に落ちるとCO二次燃焼が鈍化**、揮発分が炎に入れず、タールが凝縮して白/青煙が目立つ。
さらにCO₂/水蒸気が炭と反応(ブドワール/水性ガス、いずれも吸熱)→追い打ちで冷える。
要するに、吸熱(乾燥・熱分解・ガス化)で温度が落ちる+一時的な酸素不足で、
「発生ガスの気相燃焼に必要な ≥600–800 ℃」に届かず→未燃のタール/すす=煙が出ます。

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