NISHIO Hirokazu[Translate]
ロシアがウクライナを自分の一部と考える理由
ロシアウクライナを自分の一部と考える理由
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大きく分けると、「ロシア国内の歴史観・政治思想としての“正当化”」と「国際法上の正当性」は別物です。結論から言うと、国際法上『ウクライナはロシアのもの』という正当性はほぼありません。一方で、ロシアがそう“考えたがる”論理(内向きの正当化ストーリー)はいくつかあります。

1) ロシア側が主張しがちな「正当化ストーリー」

A. 歴史・民族の一体性(「同じ民族/同じ歴史」)
プーチンは、ロシア人とウクライナ人は「一つの民族(one people)」で、近代ウクライナ国家は外部勢力により“反ロシア”として作られた、という筋書きを強く打ち出しています。(クレムリン)
この枠組みだと、「ウクライナは本来ロシア世界(Русский мир)の一部で、分離は不自然」という感覚が“正当”に見えます。

B. 国境線の“偶然性”論(ソ連の行政区分だっただけ)
「現在の国境はソ連期の行政線にすぎない/ボリシェヴィキが恣意的に切った」という主張も、Aの補強として使われます(クリミア移管などの論点もここに入る)。(クレムリン)

C. 「ロシア語話者同胞の保護」論
「ウクライナにいるロシア語話者(同胞)が迫害されているから保護する」という理屈(2014以降とくに)。この手の理屈は、国内向けには響きやすいです(ただし国際法上はハードルが高い)。

D. 安全保障(NATO拡大=生存の危機)論
「NATOが迫っているから、緩衝地帯としてウクライナを自陣営に置くのは当然」という地政学的な“必要性”の主張。これは「所有権」ではなく「勢力圏」発想ですが、しばしば混ざって語られます。

2) しかし国際法上は「正当性」になりにくい(むしろ反対)

A. 武力による領土取得は原則禁止
国連憲章は、他国の領土保全・政治的独立に対する武力行使(威嚇・武力の行使)を禁じています。(国連)

B. 国境不可侵・領土保全の原則(欧州の安全保障秩序)
ヘルシンキ最終議定書(OSCE/CSCE)も、領土保全と武力不行使を柱にしています。(CSCE)

C. ロシア自身が「ウクライナの独立・国境」を確認してきた
代表例がブダペスト覚書で、ロシアはウクライナの独立・主権・既存国境の尊重等を再確認しています。(世界と日本)
また、1997年の「友好協力パートナーシップ条約(いわゆる“ビッグ・トリーティー”)」でも、既存国境の不可侵や領土一体性の尊重が明記されたと整理されています。(Opinio Juris)

D. 国連総会は「侵略」「併合」を否定
国連総会決議は、ロシアの行為を「侵略」と位置づけ、ウクライナの主権・領土一体性を再確認しています。(国連文書)

E. 国際司法裁判所(ICJ)も停止を命令(暫定措置)
2022年3月、ICJは(別論点はあるにせよ)ロシアに軍事行動の停止を命じる暫定措置を出しています。(国際司法裁判所)

3) 「正当性」をどう整理すると分かりやすいか
感情・歴史観としての“身内意識”(同祖論、帝国史、宗教文化圏など)
→ 国内政治の動員には使えるが、領有の権原(所有権)にはならない。
安全保障上の都合(勢力圏・緩衝地帯)
→ 国際政治の現実としては語られるが、他国の主権を消す根拠にはならない。
国際法上の正当性
→ 原則として「ウクライナはウクライナのもの」で、変更は当事国の合意など極めて限定的な手続が必要。

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