>ぼくがジブリに出入りするようになった頃、(ちょうどコクリコ坂のとき)宮崎 駿さんが歳を取るということが1日=24時間が、短くなることだと言っていた。具体的には当時の宮崎駿さんの場合は21時間になるといっていた。若い頃は朝起きてすぐに仕事ができた。でも、いまは朝4時に起きてシャワーを浴びて乾布摩擦をして散歩をしてコーヒーで一服する。それで3時間かかる。それをしないとシャキッと仕事に取りかかれない。
> そういう準備の時間が1時間必要だったのがだんだん延びて3時間になった。でも、その時間と取りさえすれば、あとの時間は若い頃と同じように働ける。だから歳を取るということは、1日が短くなることなんだ。そんなことを割とよく言っていて、確か当時の熱風のインタビュー記事にも残っている。
> なるほど、とても説得力ある。
> 当時の宮崎駿さんは70歳になったばかりで、人間70になっても、まだまだ働けるんだなと思った記憶がある。実際、70歳の宮崎駿さんは40過ぎた当時の僕よりもよっぽど長く働いていた。そういえば当時60過ぎの鈴木敏夫さんだって、連日のれんが屋での打ち合わせ兼雑談は午前0時を回ることは普通だった。それでも昔に比べるとずいぶんと早く帰れるようになったと周りのスタッフからは聞いていた。
> 1日が短くなる話について、最近は何時間になったんですか?と昨年、お会いしたときに宮崎駿さんに尋ねた。なんのことだと怪訝そうだったので、10年前ぐらいにこういうことを仰っていたと説明すると、効率だけを考えて生きていた時代の話だと、ちょっと否定的に答えられた。宮崎駿さんは、80歳になっても変わり続けているんだなと思って、少し勇気をもらった。