NISHIO Hirokazu[Translate]
満足できなくても世間の目に晒す
三流の玄人一流の素人に勝る理由は、作品の出来が自分の満足いくものではなかったとしても、恥を忍んで世間の目に晒すからだ」という話

葛飾北斎の言葉だとしているケースがあるが、葛飾北斎の娘、葛飾応為を題材にした朝井まかてによる小説『眩』での創作だと思う。 眩 - Wikipedia
2019年現在のGoogle検索で、2014年以前に"三流の玄人"を葛飾北斎と関連づけて言及した記事は見つからない。

『眩』を2015年の小説新潮3月号から引用しているブログ: 歯ぁ喰いしばって世間の目に晒す | 中村堂の日々 | 株式会社 中村堂
>「か、描き直させてもらえやせんか。お頼み申します」
> 縋るような声だ。が、親父どのはすっぱりと首を横に振る。
> 「それはならねえ。明日、納める」
> 「け、けど。こんな物を納めたら、親爺どのの名折れになりやす」
> 「それはお前が頓着することじゃねえ」
> 「に、日本の北斎が台無しだ」
> と、親父どのが肩を持ち上げ、「弥助」と厳しい声を出した。
> 「なら、お前ぇはどれだけの日数があればできる。あと三日ありゃあ出来るのか、それとも三十日か、三年かけたらきっと出来ると思うか」
> だんだん声が大きくなって、弥助も他の者も一様にうなだれる。
> 「いいか、俺たちゃ遊びじゃねぇんだぞ。これが稼業だ。限りある時でいかに描くか……その肚が括れねぇんなら素人に戻れ。その方がよっぽど気楽だ」
> そして親父どのは皆を見回し、お栄にも顔を向けた。
> 「だが、たとえ三流の玄人でも、一流の素人に勝る。なぜだかわかるか。こうして恥をしのぶからだ。己が満足できねぇもんでも歯ぁ喰いしばって世間の目に晒す。やっちまったもんをつべこべ悔いる間があったら、次の仕事にとっとと掛かりやがれ」
> お栄は己がごくりと咽喉を鳴らしたのが聞こえた。

葛飾北斎に関連づけている例


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