私的使用と同一性保持権
まとめ
以上の2つの判例は、
私的使用の場面における著作物の改変と
同一性保持権の衝突について対照的な結論を示しました。
ときめきメモリアル事件では、物語性の強いゲームに対する私的改変であっても著作者の意図を逸脱すれば人格的利益が侵害されうることが確認され、改変を助長する行為への法的責任が認められました。
一方、
三國志III事件では、利用者による結果の多様性が本質のゲームでは私的改変が著作者の想定の範囲内と評価され、同一性保持権侵害が否定されています。
この違いは、著作物の種類や表現形態(物語の固定性の有無)によって同一性保持権の及ぶ範囲が異なることを示唆しています。
また、私的使用が認められる場合であっても、第三者がそれを促す行為には法的規制がかかり得る一方、純粋に個人内部に留まる改変については実質的に不問に付される傾向があると言えます。
これらの判例は、デジタル時代におけるユーザーの創作物利用と著作者人格権保護のバランスを考える上で重要な指針となっています。