一例として、前述した『ザ・フェデラリスト』を取り上げてみましょう。この第10篇では、純粋な民主政(pure democracy)が共和政(republic)と対比されています。 著者たち(第10篇を執筆したのはマディソン)によれば、純粋な民主政とは、市民が直接集まって政府を運営する国家です。このような国家では、人々の共通の利益や感情が協力と団結を生み出しますが、反面、多数派によって少数派の利益が犠牲にされることがあります。古代の都市国家がそうであったように、激しい党派争いも起こりがちです。結果として民主主義の国家は不安定であり、個人の安全や財産権を保障することができないと説きます。 これに対し、共和政とは代表制を取り入れた政治体制を意味します。結果として、間接民主主義を通して選ばれた少数の市民が政府を運営します。そのような市民は、国にとっての真の利益、すなわち公共の利益をよく理解しているでしょう。さらに、純粋な民主政は小国にしか向きませんが、代表制を取り入れた共和政ならば、より大きな国家においても実現可能です。 このようにして『ザ・フェデラリスト』の著者たちは、純粋民主政ではなく、共和政こそを選ぶべきだと読者に奨めるのです。
The Avalon Project : The Federalist Papers No. 10
連邦論文第10号(ジェームズ・マディソン執筆)は、共和政を維持するうえで最大の脅威となる「派閥(faction)」の問題を論じた重要な文章です。