コントラストモデルでは、類似度は対象AとBの共有特徴(A∩B)の量から、Aに固有な特徴(A-B)およびBに固有な特徴(B-A)の影響を差し引くことで表される。ここで、特徴は一律の重みでカウントされるわけではなく、文脈や観察者の視点により選択的・非対称的な重みづけが起こる。この非対称性や文脈依存性が、類似度を「対称的かつ距離的な測定」から逸脱させる一因となる。
Tversky & Gati (1982)においては、こうした三角不等式の違反を直接示す実験が報告された。例えば、あるカテゴリー内の3つの概念A, B, Cを用意し、「AとBは似ている」「BとCも似ている」ことが分かっていても、「AとCが同等に似ているとは限らない」といった結果が得られた。これは、人間が類似度を判断する際には、単純な「距離的」な考え方ではなく、特徴間の比較や文脈的選択が強く作用していることを示唆する。そのため、類似性判断は幾何学的距離モデル(次元空間上での点同士の距離を用いるモデル)では説明しきれない側面があり、この非ユークリッド的な判断様式こそが、人間の概念的認識やカテゴリー化における本質的特徴の一つであると考えられている。
距離が成立しないって話と"非ユークリッド的"とは別の話ではない?
つまり、Tverskyらが示した「類似性は三角不等式を破る(=距離公理としての成立を崩す)」という結果は、類似性判断の結果が「非ユークリッド的な距離」を示したわけではなく、「そもそも距離として定式化できない」ことを意味します。非ユークリッド距離はあくまでも「距離」である以上、三角不等式は守られますが、Tverskyの議論はその「距離ですらない」点が問題となっているのです。