NISHIO Hirokazu[Translate]
あえて詳細情報を省く
>@shodamiwa: 「立て続けに不安なことがあって、
>相談したら、
>いま決断するのはいい時期だ…
>という話になった」
>この文章の書き方、わかりますか?

>恋愛相談だと思う。
> 友人知人間での悩みだと思う。
> 仕事の問題だと思う。
>
> など、どう捉えたでしょうか?

> 元の文章はこちら。
>
> 「立て続けに
> (家電が不調になってくという出費的、生活的に)
>  不安なことがあって、
>
> (家電売場の店員さんに)
>  相談したら、
>
>  いま(新生活応援キャンペーンをやってるので)
>
> (買い替えを)決断するのはいい時期だ…
>  という話になった」

> 「具体的な情報」を消すことで、読む側が「足りない情報を足しながら」読み進めます。「恋愛相談かな?」「学校でのことかな?」とあれこれ推理して、理解しようと工夫していく。読む側が、自らクリエイトしていくということです。

> ある程度の情報が乗ったテキストは、「その詳細をほどよく省く」ことで、読む側の「補ってでも理解しようとする力」を引き出すことができます。ゲームシナリオでは、この効果を利用し、ユーザーさんひとりひとりに「自分ならではの体験だ」と感じられる状況を仕込んでいけるのです。

> ツイッターの例で言うと。「リアルにあったことを、リアルに書き込むのがツイートだ」と思いこんでしまうと。「自分が知らず補った詳細情報」と、「書いてある情報」と「書き手が省いた情報」とがわからなくなり。「自分が補った情報」に引っ張られて、大きく読み間違えることもでてくるのです。

> 「自分が理解できないもの」に遭遇したとき。「自分の馴染みの情報」や「過去の体験」を持ち出して、理解しやすいように補ってしまう」というのが癖になってしまうと。勘違いや、早とちりにつながりやすいです。

> 話を戻して。
> ゲームシナリオでは、この、「足りない情報をつい自分の方で補いながら読み進めてしまう」という性質を利用していくことができます。なので、人々にわかりやすいものにするために「あえて、詳細情報を省く」…という選択もあるのです。

> この「省く」が難しいのですが。盆栽の、どの枝を残し、どの枝を切るのかにも似て。足すのも盛るのもある程度はできますが、引き算ほど美学が必要です。
> 日々のツイートから詳細情報をほどよく省くことで、どこまで一般化できるか?の訓練もできます。ツイッターは練習場でもありますね。

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