蔵王権現
真言: おん ばさらくしゃ あらんぎゃ うん そわか
ばさらくしゃ=金剛鉤 について

一番直接的な出典は、国立民族学博物館の Buddhist Fire Ritual in Japan です。§2.6.4.2で、
ON BAZARA KUSYA ZYAK = oṃ vajrāṅkuśa jaḥ
また『智山学報』第69輯も、音写「唵嚩日囉倶捨惹」を
oṃ vajrāṅkuśa jaḥ と還元し、「金剛鉤菩薩の真言」と説明しています(本文pp.449、454–455)。
小崎良行論文語義自体は、
vajra =金剛
aṅkuśa =鉤、とくに象使いの鉤
したがって、 ばさらくしゃ ≒ vajrāṅkuśa(金剛鉤) にはかなり近い並行例があるものの、この蔵王権現真言については復元候補です。現在の表示を vajra / aṅkuśa? 、日本語を「金剛/鉤」として疑問符を残しているのは妥当です。
あらんじゃ=王 について

根拠は、別の金剛王菩薩の真言における対応例です。
『豊山学報』第63号では、
>バザラ アランジャ = vajrarāja(金剛王よ)
と明示されています。高野山関係の読誦資料でも、金剛王菩薩の真言を「オン バザラ アランジャ ジャク」としています。 rāja 自体の辞書的意味は「王」です。
ただし、蔵王権現真言そのものの出典は「あらんじゃ」という読みを示すだけで、「ここが rāja である」とは説明していません。したがって、
アランジャ → rāja → 王 :真言資料の並行例に基づく推定
蔵王権現真言における確定的な語釈:ではない
という位置づけです。現在の rāja? という疑問符は残すべきで、日本語も厳密には「王?」または「(王の可能性)」とするのが整合的です。