>yutaro_0518 『21世紀を動かす思想』を読んだ。
> 一方で総花的な感も否めなくて未来学のところを基本線に、未来を考える上で…みたいな感じで紹介された方が面白かった気も。あとがきもめちゃくちゃ面白かった。
>empirestar 樋口恭介『21世紀を動かす思想』(集英社新書)は、ここ数年ぐらいの思想的潮流が丁寧にまとめられており、SF作家・コンサルタントとしてどう未来をデザインし、選択するのかを、SFプロトタイピングなどの手法から解説した本である。特に加速主義の系譜、プルラリティ、未来学の解説が秀逸(長文です)。#読了
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> ここ数年木澤佐登志さんの本やニック・ランドの本を読んでいて、テクノロジーによって資本主義を破壊し、それを超えていくという考えがテック系リーダーの一部によって提唱されており、実践しているものもある。加速主義にも色々な思想的な潮流があり、プリズムのスペクトラムのように多様になっている(左派から右派)。
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> 無条件的加速主義(人間の倫理的価値判断などを捨てて、究極的にテクノロジーが進歩するままにする主義)、G/acc(ジェンダー加速主義、こちらはテクノロジーによって新たな身体性を獲得しようとするもの)、e/acc(効果的加速主義:熱力学的な法則に基づき、技術革新によるエネルギー消費と複雑性の増大を全面的に肯定する主義)がある。右左については、L/Acc(左派加速主義):テクノロジー(自動化など)を極限まで押し進めることで、労働から人間を解放し、資本主義そのものを超克しようとする主義や、ニック・ランドらが提唱した、R/Acc(右派加速主義 ):資本と技術の自己増殖的な加速を肯定し、人間的な価値観や国家の枠組みを置き去りにして、ポストヒューマン的な未来を目指す主義、とまとめることができる。
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> 加速主義だけでもたくさんあるが、キーになるのはd/acc(防御的加速主義)である。これはテクノロジーの進歩を全面的に肯定しつつも、それが中央集権的な支配や破滅を招かないよう、「防御(防御技術やプライバシー、分散化)」を優先的に加速させるという主義である。dが意味するところに、民主制(democracy)のdも入っているところもポイントが高い。
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> このような整理の下で、違う視点としては複数の主体が分散的に協力し、既存の国家や企業の枠組みを超えて「民主制を再発明」しようとする志向である、プルラリティがポイントとなる。これらはオードリー・タンや経済学者のグレン・ワイルらが提唱した概念で、日本でも昨年著書の翻訳の際にカンファレンスが行われたのは記憶に新しい。差異をうまく意思決定に取り込みながら、それを源泉としてテクノロジーの協力のもとに設計、構築をする考えで、d/accとも調和するところがある。
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> 具体的にこのような潮流のある中で、どのような手法が利用できるかという点で、本書は「未来学」を提唱し、起こり得る未来の可能性を考え、デザイナーの価値判断が入った望ましい未来を指向していく学問や、SFプロトタイピングのようなバックワードで未来をデザインするという考え方もまたある。
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> 未来は不確実で複数ある、その中で最善なものを選べるかどうかという点において、様々な手法が開発されており、そこにSF小説やSF作品からの影響が大きいという点にある。SF小説の想像力があり得る未来のノードをある程度大雑把な方向性として定め、それに向けてテック系の巨人たちがその方向に向けて最適経路を模索しつつ、進路を決定している。また、SFプロトタイピングの在り方はSF的な想像力が生み出す創造物が、ベルマン的なバックワードな指向性によって、終点が定まり、現在に影響を及ぼす。
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> つまり複数ある可能性をどう絞り込んで、最適経路に落としてくのか、その手法を我々は学ぶことによって、分断が加速し、混沌とする世界の中で生き延びる知恵を得たともいえる。アシモフの<ファウンデーション>的な在り方というのは、まさに本書で述べられている世界観と合致するのではないかと思う。ということで、SF小説を読みましょう(樋口さんの『構造素子』は面白いよ!)。