NISHIO Hirokazu[Translate]
なぜアメリカ人は福祉を憎むのか
>brighthelmer マーティン・ギレンズ『なぜアメリカ人は福祉を憎むのか』(未邦訳、1999年)という本がある。なぜ米国では他の先進国ほどに福祉が発達しなかったのかを説明する著作だけれども、要は米国人の多くは福祉受給者の大多数がアフリカ系の人々だと誤解してきたがゆえに福祉に反対するのだという。1/5
> >jiro6663: アメリカがその典型らしいのだが、ある程度多様性の高まった社会では政府が再分配を進めようとすると逆に支持率が下がるということがあるらしい。得をするのが「自分たち」ではなく「あいつら」だと感じるからとのこと。まさに今回の選挙だ。近代以来の国民国家の曲がり角にあるんだなあと思う。

>brighthelmer ただし、これは単純な集団間の対立ではなく、アフリカ系の人々の多くが福祉に依存する怠け者だとの認知がまずあり、そのことが福祉反対をもたらしているという。だから、労働を推奨する反貧困プログラムであれば、利用者の大部分がアフリカ系の人々だとわかっていても強い反対は起きないとされる。2/5

>brighthelmer ではなぜ、そうした認知が生まれたのかと言えば、メディアが大きな役割を果たしてきたという。メディアが貧困を取り上げるさい、貧困者のなかでアフリカ系の人々が実際に占めるよりもはるかに高い割合で、アフリカ系の人々を取り上げる傾向にあった。3/5

>brighthelmer ところが、メディアで働いている人は、そうしたバイアスの存在に無自覚で、自分たちがそれほど多くのアフリカ系の貧困者を取り上げていると指摘されるとかなりの驚きを示したのだという。4/5

>brighthelmer おそらく貧困のイメージが必要だとなれば、ジャーナリストは深く考えることもなく、近隣のアフリカ系のコミュニティに行って撮影していたのだろうと推測される。もちろん、これが米国における福祉の貧弱さの唯一の説明ではないとは思うけれども、一つの見方ではなかろうか。5/5


"Engineer's way of creating knowledge" the English version of my book is now available on [Engineer's way of creating knowledge]

(C)NISHIO Hirokazu / Converted from [Scrapbox] at [Edit]