NISHIO Hirokazu[Translate]
社会を人間による計算として考える:質疑

予測市場は先物市場みたいなもの?
o3両者とも「将来の出来事に関する契約を売買し、その価格が市場参加者の期待を表す」という点では似ています。しかし 先物取引は“価格リスクの移転”が本質、予測市場は“情報集約による確率推定”が本質——目的・清算方法・規制枠組みが大きく異なります。

計算について書いてほしいという依頼
今僕が書くとしたら何かなとなって、社会は計算だよねとなった
「IOのバンド幅を広げる」「純粋関数は入力が同じなら出力も同じ」などのコンピュータサイエンスの概念を使いながら全体としては社会の話をする

予測市場では金を持っている人の声が大きくなるか
なる、なったほうがいいのかならないほうがいいのかはテーマによって異なる
市場は基本的に金を持っている人の声が大きくなる仕組み
1人1票の投票で決めるのは、金を持っている人の声が大きくならない仕組み
その代わり強い意見がある人の声も弱い意見の人の声でも同じ1票なので少数派は抑圧される(多数派の専制)
Q: マイノリティが不利になることを許容するか、貧富の差を許容するか
A: 貧富の差に対するアクションはお金を持っている人から私有財産を奪ってそれを持ってない人に分配するっていう「再分配」の仕組み、この仕組みのルールを決めるところに「金を持っている人の声が大きくなる仕組み」を使うと分配されない方向に進むからよくない
追記:
再分配のうちの「誰からいくら取るか」の部分は金が投票権になると金持ちから取らない方向に進むからQFするべきでない
「誰にいくら配るか」の部分は、少数の人しか受益しない選択肢を選ぼうとするとそれによる利益以上に支払いが必要になるQFを使うことは別に問題ないよねという感じ
>QFは100人が100円払うのと1人が100万円払うのが同じ発言力
これは「思い通りの結論にならない人に対する補償金の額の平等」とも言える
一方でそれを全ての政策決定に使うとマイノリティは不利になる
Q: 全員の持っているチップが同量で、それを分配して投票するのはどうか
A: それがQuadratic Votingですね
定量の投票権を配るのではなく「寄付の額」によって投票権が増えるようにしたものがQF
これもGitcoinという形でOSSに対するgrantが結構な金額で行われている
追記:
多数派の専制でマイノリティの強い意見が潰される問題に対して「一定量の投票権を与えたらどうか」という話のところ、端折りすぎてたので補足すると
Audreyの簡素化したQuadratic Votingでは99票配ってて手、実際1票しかない状態よりは意見の強さが表明できてマシだと思う
反面、投票の際に99票もらえて、投票しなかったら価値を失う場合、強い意見のない人も「もったいないから投票するか」という行動にインセンティブがあり、多数派の専制の解決としては弱い
この問題の解決のためには投票に使われるトークンが選挙後にも価値を持ち続けて、強い意見のない人に「将来のために取っておこう」と考えるインセンティブが必要
これを実現する手っ取り早い方法が「金が投票権」というQuadratic Funding

予測市場では公共財が破壊される問題が解消しなさそう
現状の予測市場単体だとそうでしょうね
将来成功する可能性のあるプロジェクトにかけるというベンチャー投資の予測市場化をすると、自分にとって有益な公共財を作ることに対してお金を投じるインセンティブが生まれる
QFでの公共財投資とかRetroactive Public Goods Fundingとか
炭素クレジット取引で公共財である森の保全の費用を獲得してる話

予測市場だけでは公共財投資の話にならないので、QV、QFあたりの話をちゃんとやらないといけないなという気がしてきた
QFは100人が100円払うのと1人が100万円払うのが同じ発言力になるので、多くの人が受益する公共財に対して投資する目的にフィットする

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