リチャード・セネットの『公共性の喪失』の要点は次の通り。

セネットは、近代社会で政治的な公共性が衰退し、「私的領域」と「公的領域」が融合・縮小され、「社会領域」という中間的な空間に収束してしまったと指摘している。

本来、公共的な議論の場（公的領域）では、個人の私生活や内面ではなく、「政策の妥当性」や「公共の利益」が重視されるべきだった。しかし現代では、個人の人格や親しみやすさ、人気といった「私的な側面」が評価されるようになり、政治が「人気投票」のようなものになってしまったと彼は批判する。

セネットは、このような現象が起こると、政治家の資質や政策の実質的な内容よりも、大衆にとって好感度が高い人物が選ばれる傾向が強まり、民主主義が本来の機能を果たさなくなる危険性を懸念している。