NISHIO Hirokazu[Translate]
鍵アカ投稿の転載を正当化する
Twitterの100人以上のフォロワーがいる非公開アカウント(以下「鍵アカ」)に投稿されたものを公開のアカウントが転載することを考える。
素朴に「やってはいけないこと」だと思う人もいるだろうけど、このページでは「やっていいことだ」と著作権法に基づいて正当化する。

まず引用の体裁を整える。
例えば出所を明示する。アカウント名をモザイクにしたりとかせず、誰が投稿したのか明確にする。リンクも含めると良い。
また、単なる転載ではなく、その内容を批評するために最小限の量にする。

そして32条に基づいて「公表されたものは引用して利用できる」と主張する。

著作権法
>(引用)
> 第三十二条 公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。

>最高裁判決(写真パロディ事件第1次上告審 昭和55.3.28)を含む多数の判例によって、広く受け入れられている実務的な判断基準が示されています。例えば、1主従関係:引用する側とされる側の双方は、質的量的に主従の関係であること 2明瞭区分性:両者が明確に区分されていること 3必然性:なぜ、それを引用しなければならないのかの必然性が該当します。

次に「鍵アカの投稿は公表されたものか?」の議論をする。
18条に基づいて「公表とは公衆に提供し、又は提示することだ」と主張する。
>(公表権)
> 第十八条 著作者は、その著作物でまだ公表されていないもの(その同意を得ないで公表された著作物を含む。以下この条において同じ。)を公衆に提供し、又は提示する権利を有する。当該著作物を原著作物とする二次的著作物についても、同様とする。

では「公衆」とは?これは2条に定義がある。
>(定義)
> 第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
>5 この法律にいう「公衆」には、特定かつ多数の者を含むものとする。
「100人は多数である」「特定の人しか閲覧できない鍵アカであっても、フォロワー人数が多数であればその投稿は公衆に提示されたものであり、公表済みである」と主張する。

これを全部繋げて「100人以上のフォロワーがいる鍵アカの投稿を公開アカウントで引用するのは著作権法に認められた権利である」と主張する。

-----追記: 何人以上で多数なのか
>満永 拓邦 気になったので調べましたが
>・文化庁的には50人を超えると多数
>・判例上は300人を超えると多数
>としているようです。 Facebook

>何人以上が「多数」かはケースによって異なると思われますが、一般には「50人を超えれば多数」と言われています。

東京地判平成12年2月29日判時1715号76頁
「中田英寿 日本をフランスに導いた男」事件:第一審。
「300人に配布された中学校の学年文集に掲載された内容は公表されたものか?」「Yes、300人は多数である」
>サッカー選手である原告(中田英寿)は、被告著者が執筆し、被告出版社(株式会社ラインブックス)がその出版した書籍「中田英寿 日本をフランスに導いた男」のなかに、...中学生時代の詩(「目標」)を掲載したことが、...著作者人格権...を侵害すると主張して、本件書籍の発行の差止めおよび損害賠償を求めた事案である。
>三 争点3(公表権の侵害)について
> 1 公表権の侵害は、公表されていない著作物又は著作者の同意を得ないで公表された著作物が公衆に提供され又は提示された場合に認められる(著作権法一八条一項)。
>  本件詩は言語の著作物(同法一〇条一項一号)であるから、これが発行された場合に公表されたといえる(同法四条一項)ところ、右の「発行」とは、その性質に応じて公衆の要求を満たす程度の部数の複製物が作成され、頒布されたことをいい(同法三条一項)、さらに、「公衆」には、特定かつ多数の者が含まれるとされている(同法二条五項)。
> 2 これを本件についてみるに、証拠(乙一、四)によれば、本件詩は、平成三年度の甲府市立北中学校の「学年文集」に掲載されたこと、この文集は右中学校の教諭及び同年度の卒業生に合計三〇〇部以上配布されたことが認められる。
>  右認定の事実によれば、本件詩は、三〇〇名以上という多数の者の要求を満たすに足りる部数の複製物が作成されて頒布されたものといえるから、公表されたものと認められる。
> また、本件詩の著作者である原告は、本件詩が学年文集に掲載されることを承諾していたものであるから、これが右のような形で公表されることに同意していたということができる。
> 3 したがって、公表権侵害を根拠とする原告の請求は、理由がない。

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