エコツーリズムを通じた地域の独自性の創出
論文(「エコツーリズムを通じた地域の独自性の創出」
権 永詞 2024)の要約です。
主張:エコツーリズムは「自然保全×観光」を両立させる手法であるだけでなく、後期近代の「
独自性(singularity)」の価値づけを通じて、地域を“唯一無二の場所”として作り直すプロセス(文化化)である。
方法:①都道府県・DMOへのアンケート(93件、有効回収率58.1%)でアウトドア観光化の全国傾向を把握し、②北海道・阿寒摩周国立公園(弟子屈町)のフィールド調査で「規制がどう独自性を作るか」を具体例で示す。
全国傾向(アンケート):アウトドアは主要観光資源と認識される一方、課題の優先は「安全・採算・人材」が上位で、「自然保全とのバランス」は相対的に下がりやすい。対策も「啓発」が中心で、人数制限など強い規制は支持が割れる=“公的規制は緩和し、私的モラルに委ねたい”傾向が見える。
弟子屈町の事例:住民主体の協議会がエコツーリズム全体構想を策定し、国の「国立公園満喫プロジェクト」と接続。象徴的には廃屋ホテル解体が「数を追う観光」から「高品質で選ばれる観光」への転換(地域の自己像の再構築)として位置づけられる。
規制が独自性を作る3例:
1. アトサヌプリ入山:元々禁止→認定ガイド付き有料ツアーで解禁(安全+保全+観光商品化)。
2. 屈斜路湖の動力船規制:騒音・安全だけでなく「静かな湖」というブランド/ふさわしさを作る方向に作用。
3. 釧路川源流の自主規制:倒木処理など「必要最低限」の線引きをめぐり、何がその場所に“ふさわしい”か(独自性)を内部で問う。
結論(含意):エコツーリズムは地域のプロフィールを磨く成功戦略になり得る一方、「ふさわしさ」基準が来訪者の選別・隔離(文化的
セグリゲーション)を生むリスクがある。経済効果だけでなく、価値付与/剥奪という“社会文化的開発”として慎重に見るべきだ。
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