NISHIO Hirokazu[Translate]
Audreyとd/accとdifferential
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Audrey Tang は d/acc を「分散・民主化された“守りの加速”」 と明確に定義し、Plurality 戦略の中心概念として国内外で発信しています。

d/accについて — Audrey Tangの主な発言まとめ(要点)
2025-03-03 Nikkei BP インタビュー
「攻撃能力が分散した今、防御技術も分散させる必要があります。私たちはこれを“d/acc”(Defense-Decentralization-Democracy/Acceleration)と呼びます。こうした分野をオープンにしても武器化リスクは増えません――犯罪者は既に同等の手段を持っているからです。」
→ 防御・分散・民主化を同時に加速させるべきだという定義的コメント
2025-04 配信 “The Great Simplification” ポッドキャスト
「これは民主化と防衛のための分散化を加速するアプローチで、シンギュラリティ型の“垂直”加速とは対極にある“水平”拡散です。Vitalik Buterin はこれを ‘Defensive Democratic Decentralization Acceleration’ と呼んでいます。」
Singularity vs Plurality の対比を示し、d/acc を「横に拡がる加速」と位置づけ
d/acc Day @ ETHTaipei(2025)
プログラム登壇者として “d/acc” の理念と “Plurality” を掛け合わせた講演を予定。
→ Audrey Tang が d/acc コミュニティ側の主要スピーカーであることを示す最新イベント

重要なポイント(日本語で要約)
1. 定義
d/acc = Defense + Decentralization + Democracy / Acceleration
攻撃側が既に分散・民主化されたツールを使う時代において、守りの側もオープンかつ分散した安全技術を加速すべきだ、という考え方。
2. なぜ「公開しても安全」か
攻撃者は既に同等の AI・自動化手段を持っているため、防御技術をクローズにしても非対称は解消されない。むしろ 「全員に配る方が安全」 というロジック。
3. Pluralityとの連続性
Audrey はシンギュラリティの垂直加速(e/acc)的ビジョンを批判し、人間同士の協調を“横に”強める Plurality を提唱。その実装指針が d/acc——つまり「民主化された安全保障の水平拡散」です。
4. 具体例
CSAM 検知モデルを各端末でローカル実行する “ROOST
詐欺広告ブロック義務化(各プラットフォームに電子署名を要求)
いずれも「中央集権な検閲」でなく「分散型防御」を採用。
5. コミュニティ形成
Vitalik Buterin ら Web3 界隈とも共通言語になりつつあり、DevconSEA → ETHSF → ETHTaipei と“d/acc Day”が連続開催。Audrey Tang は毎回キーノート級の立場で登壇している。


nishiodifferentialとの関係は?
要するに:d/acc は “differential acceleration(差分加速)” の応用版
「危険な技術よりも安全・防御・民主化に資する技術を速く進める」という Nick Bostrom の “differential technological development”(DTD)を、Audrey Tang や Vitalik Buterin が 防御(defense)・分散(decentralization)・民主主義(democracy)の文脈で実装しようとしている、という位置づけです。

1. “differential” とは何か
Differential Technological Development (DTD)
2002 年に Nick Bostrom が提唱。
危険技術を遅らせ、リスク低減技術を先に進めることで 相対スピード差 をつけ、人類の安全域を広げる戦略。

2. d/acc の命名と “differential”
Vitalik Buterin は d/acc の d
> *defense, democracy, decentralization, or differential technological development*
と明示。
* つまり d/acc ≒ 「防御を優先的に差分加速する DTD」 という宣言。

3. Audrey Tang が語る d/acc
Audrey は 「攻撃側が既に分散しているなら、守りも分散してオープン化しよう」 と述べ、
CSAM 検知を端末側で動かすローカル AI
詐欺広告ブロックを電子署名で分散実行
――などを例示。これは DTD を“守り+分散+公共性”に特化 した実践。


4. 関係性を図式化
Bostrom DTD
「有害 < 有益」になるよう速度差を設計
differential acceleration(差分加速)の一般原理
d/acc (Buterin)
defense / democracy / decentralization を優先的に加速
Audrey Tang の d/acc
pluralistic・水平協調の安全技術を国際連携で実装


まとめ
“differential” =「危険より安全を先に進める差分加速」
d/acc = differential 加速の防御・分散・民主化バージョン
Audrey Tang は d/acc を Plurality 実装戦略 として推進し、具体的にはローカル AI でのセキュリティ確保や分散型検証基盤などを提案している。
したがって d/acc と differential の関係は「理論(DTD)と実装指針(d/acc)」の関係 と理解するとスッキリします。

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