公共財概念の細分化の歴史
当たり前の素朴な概念Aがある
Aの仲間だが、普通のAではないものがあると気づいて概念Bができる
狭義のAとBは排反である
関連概念Cがあらわれる
AとCは属性Xにおいて相反し、BとCは属性Yについて相反する
2x2のマトリクスがあり、空欄になっていたところが概念Dと名付けられる
もっとシンプルになったバージョン
いい抽象化です。発展の“型”として見ると、次のダイナミクスが走っています。
パターンの読み解き
現象の多数を“それっぽく”まとめる大きな箱。境界は曖昧で、判断は類似性ベース。
2.
例外の浮上→Bの切り出し(異常事例の制度化)
Aの中に“ふつうのAではない”塊が繰り返し現れ、Aの本質条件が言語化される。
→ 狭義AとBが排反になる(境界を明確化した証拠)。
3. 直交する性質の導入→Cの登場(次元の発見)
AとBを説明するだけでは足りず、新しい属性(X, Y)が見出される。
AとBの違いを記述しようとする試みの中で、2つの選択肢があることがわかる

AとCはXで相反、BとCはYで相反、というように二軸構造が立ち上がる。
この段階で、分類は“名づけ”から“座標づけ”へと質的転換。
4. 2×2の負空間→Dの命名(理論的完備化)
座標平面に空白の象限が生まれる。理論の対称性が「そこにも型があるはずだ」と示唆。
実例がすでにあれば再命名、なければ将来の発見・設計ターゲットとしてDを定義。
この型がうまく機能する条件
軸の妥当性:XとYが実質的・測定可能で、なるべく独立(直交)していること。
操作的定義:X・Yの判定手順が共有可能(定性的でもよいが再現性が必要)。
予測力:Dを入れることで、未観測の性質や制度設計の含意が新たに予測できる。
頑健性:領域が変わっても(別のドメインでも)説明力が落ちない。
時間変化への耐性:技術・制度でX/Yが動く(例:DRMで“排除性”を人工的に上げる/混雑で“競合性”が連続値化)。連続化やハイブリッドも扱える拡張性が必要。
リスクと注意
“空欄埋め”先行の名目カテゴリ:Dを“対称性の都合”だけで急造すると空洞化。実例・測定・予測で裏づけを。
2×2過信:本当は3軸以上が必要、あるいは軸が文脈依存な場合がある。
境界の粗さ:連続的・条件依存(「混雑すると競合的」など)を無理に二値化しない。
公共財の例に当てはめると(対応づけの一案)
A=公共財(非競合)という素朴像
B=クラブ財(“公共っぽいが違う”を切り出し)
C=コモンプール資源(競合性を強く意識させる出現)
軸=X: 競合性(減耗性)/Y: 排除性
D=私的財(理論座標上の残り象限として位置づけが明示)
※歴史的順序は必ずしもA→B→C→Dの通りではありませんが、概念空間を座標化して“空欄”を含めて完備化するという発想が働いています。
いや、まずA:財があるんだよ
B: Samuelson (1954) が「共同消費(非競合性)」を定義して純粋公共財を定式化、
この時は属性X(競合性)だけが言語化されていた
しかし属性Yが言語化される
Y: Musgrave (1959) が「(非)排除性」 を提示
それによってC: Buchanan (1965) が「クラブ財(排除可×非競合)」を提示
最後にD: Ostrom コモンプール資源(非排除×競合)
はい、その並びでほぼ正確です。補足だけ:
B(1954):Samuelson が「共同消費=非競合性」で純粋公共財を定式化。競合性(非競合)の軸が先に明確化。
Y(1959):Musgrave が
排除の原理(excludability)を公財論に明示。のちの「非競合×非排除」の二基準も Musgrave 系の整理で結晶化。
C(1965):Buchanan が クラブ財(排除可×非競合)を提示。混雑(部分的競合)も分析。
D(1977/1990):Ostrom & Ostrom が排除性×減耗性(競合性)の2×2を提示し、**コモンプール資源(非排除×競合)**を明確に位置づけ。Ostrom (1990) が制度設計を体系化。
※ただし Dの実体(共用資源)自体は、Ostrom 以前に Gordon (1954) の“共用漁業”や Hardin (1968) の“共有地の悲劇”で問題提起済み。Ostrom はそれをCPRとして理論的に確立し、2×2に組み込んだ、という位置づけです。(
economia.unam.mx)
一言で:軸(非競合→排除)が先に言語化され、そこからクラブ財が導入され、最後に2×2の枠組みでCPRが“空欄の象限”として確定した、という流れです。