NISHIO Hirokazu[Translate]
完全な合意を追求すること自体が危険
完全な合意を追求すること自体が危険

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政治理論家シャンタル・ムフは、民主主義において完全な合意を追求すること自体が危険であり、常に異議や対立(アゴン)が表出できる仕組みが必要だと説く。ムフによれば、全員が理性的に合意できる公共善などというものは神話であり、それを目指す「合意志向の政治」はしばしば少数派の排除を伴う​。むしろ健全な民主主義には、一定の基本価値観でのコンセンサスはあっても、具体的政策では常に異論がぶつかり合うことが不可避かつ望ましい状態である​。ゆえに「合意の政治」への過度な傾斜は、人々を政治的無関心や退屈へと導き、民主参加を衰退させるとムフは警告する​。これはハーバーマス的な熟議民主主義モデルへの批判として提示されたアゴニズム論争主義)の立場であり、合意の幻想に対抗して「建設的な不一致」を制度化することの重要性を強調している。


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