Concreteness of thinking and self-focus
抑うつ傾向が高い個人は日常の思考の具体性が低く、また思考の具体性が低い場合のみ反芻的な自己注目と負の感情に正の関連がある、という研究
具体的に「あー、Xって失敗をしてしまった、先にYしておけばよかった」と反芻してるときには負の感情になりにくく、それが抽象化されて「自分はこの手の失敗をいつもしている」とか考え出すと負の感情になる、抑うつ傾向の高い人は後者の考え方をする癖がついてる、という感じの話

抑うつ傾向が高い個人ほど、日常の思考の
具体性が低いことが分かりました。
反芻的な自己注目と同時に起こる負の感情には正の関連がありましたが、これは思考の具体性が低い場合にのみ見られました。
これらの結果は、抑うつ傾向の高い個人が自己関連情報を慢性的に抽象的なレベルで処理していることを示唆しています。
この抽象的な処理は、自己調整サイクルの機能不全を反映し、抑うつ気分の維持や悪化につながる可能性があります。
研究者らは、思考の具体性が自己注目と負の感情の関係を調整する役割を果たすと仮説を立てました。
この研究は、日常生活における思考パターンの変動を捉え、抑うつ症状との関連を調べるユニークなアプローチを取っています。
これらの知見は、抑うつの
認知プロセスについての理解を深め、介入方法の開発に貢献する可能性があります。
この論文は、既存研究について以下のように解説しています:
多くの先行研究が、自己注目の増加が負の感情や抑うつ症状の上昇と関連することを示しています。
特に、
抑うつ的反芻(苦痛の症状やその原因、結果に繰り返し注目する傾向)は、抑うつの重要なリスク因子であることが分かっています。
自己注目の適応的側面:
一方で、自己注目が適応的で有益な結果をもたらす可能性も理論的に提案されています。
自己注目の適応性を決定する重要な次元として、具体的構成と抽象的構成の区別が挙げられています。
具体的思考と抽象的思考:
具体的思考は、状況に特有で、明確、単一的なものとして操作的に定義されています。
抽象的思考は、不明確で、状況を超えた、曖昧なものとして定義されています。
心配や抑うつ的反芻では、具体性の低下が見られることが示されています。
実験研究:
具体性のレベルを操作することで、自己注目の異なる機能を調査した実験研究があります。
これらの研究は、抽象的な自己注目が感情反応や社会的認知に悪影響を与えることを示しています。
制御理論との統合:
Watkins (2008)は、具体的vs抽象的次元を制御理論に統合しました。
この理論では、目標追求が階層的に組織化されており、成功的な自己調整には抽象的レベルから具体的レベルへの切り替えが重要だとされています。
経験サンプリング法(ESM)を用いた研究:
先行のESM研究では、瞬間的な反芻的自己注目と同時および後続の負の気分との間に正の関係があることが示されています。
これらの既存研究を踏まえ、本研究は日常生活における思考の具体性の変動と、それが自己注目と感情状態に与える影響を調査する新しいアプローチを取っています。