NISHIO Hirokazu[Translate]
Roads and Bridges: Funding Our Digital Infrastructure (Panel)

1. パネルの概要
登壇者
Scott Moore(Public Works / Gitcoin創設者の一人)
Cheeky Gorilla(Protocol Guildコア貢献者)
Shinya Mori(司会進行:Frum Venturesなどでリサーチ・公的資金制度を研究)
テーマ
「仮想通貨(特にイーサリアム)におけるパブリック・グッズ(公共財)をどのように資金支援するか」

2. 仮想通貨がもたらした公共財への注目
イーサリアムのようなオープンソース・プロジェクトは「誰でも使えるインフラ」であるが、メンテナ・開発者が十分に報酬を得られないという課題がある
これまで政府や従来型の助成金では不十分だったが、仮想通貨の仕組みやコミュニティ文化によって「公共財を支援しよう」という動きが高まっている

3. GitcoinやQF(Quadratic Funding)の背景
Gitcoinは四半期ごとに「Quadratic Funding(QF)」を採用して、コミュニティの寄付に対するマッチング・ファンドを拡充
QFは「どれだけ多くの人が小口でも支援したか」に応じて大きなマッチング額が決まる仕組み
成功例として、UniswapOptimismTornado Cashなど、有力プロジェクトが初期支援を得て大きく成長

4. Protocol Guild の仕組み
Protocol Guild は、イーサリアムのコアプロトコルを支える開発者・研究者(約180名)を対象に長期的な資金インセンティブを提供する仕組み
ネイティブトークンを寄付・ベスティング(4年間など)し、コア開発者が他社オファーに流れず、引き続きイーサリアム開発を続けられるよう支援
自己キュレーション方式:メンバーの追加・削除は当事者たちが合意形成を行う
ただし人数拡大に限度があるため、「ツール開発者向けギルド」など、別のギルドが派生する可能性も議論されている

5. 公共財支援のジレンマ
Inclusivity(包摂性) を重視すると、分散的に多くのプロジェクトを支援できる一方、ノイズや質の低いプロジェクトを含むリスクがある
Exclusivity(限定性) を重視すると、より的確に重要な開発者を支援できるが、範囲が狭すぎて取りこぼしが生じる可能性もある
Quadratic Funding と Protocol Guild は、それぞれ広く募るタイプ・限定的に募るタイプとして補完関係にある

6. 今後の展望
「ギルド」という形態は、分野を絞って少人数で自己キュレーションすることで効率よくインセンティブを配分できる
イーサリアム・コア開発以外にも、ZK技術やツール開発など他分野でのギルド設立の動きが出ている
パブリック・グッズ資金調達は依然模索段階であり、GitcoinやProtocol Guildをはじめ、多数の実験が進行中

7. Protocol Guild への関わり方
非エンジニアでも、Protocol Guildの運営(オペレーションや資金集め、広報調整など)を手伝うことで貢献可能
コア開発者と同様に、運営の継続には「長期的な関係構築」が欠かせない

まとめ
仮想通貨の登場により、グローバルな「公共財をどう支援するか」という問題意識が改めて注目されている
Gitcoinのような広範なQFと、Protocol Guildのようなコア開発者向けの集中的な支援策は、相互に補完しあう関係
コア開発の離脱を防ぐための金銭的インセンティブと、信頼できる自己キュレーションが今後のカギ
公共財資金調達の取り組みはまだ途上であり、多くの実験と学びを通じて持続可能なメカニズムを探っている
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