NISHIO Hirokazu[Translate]
熟議の質
熟議の質をどう測るかのサーベイ
熟議の質は単一指標で決め打ちできない
何を“良い熟議”とみなすか(規範)
どの粒度で観測するか(発話/スレッド/会議全体/社会システム)
プロセスを見るか、結果を見るか(直接/間接)
Bächtigerらの整理が分かりやすいです。
熟議測定は大きく次の軸で分類されます。
ミクロ分析:参加者の発話(投稿)内容を近接的にコーディングして熟議の質を見る
マクロ分析:討議(会議・スレッド)全体に対して要約的な判断を下す
直接測定:討議中の発話・相互行為そのものを測る
間接測定:熟議の「前提条件」や「成果」(例:討議後の選好変化)から推定する
そして重要な注意として、間接測定は便利だが「熟議が実際に起きたか」を断定しにくい、という限界も明示されています。

規範モデルの違い:Type I(合理主義)と Type II(拡張)
測定は規範理論に依存します。特に頻出なのが Type I / Type II の区別です。
Type I:ハーバーマス的な「理由提示・公共性・尊重・反論への応答・建設性」などを中心に、合理的討議を重視(典型が DQI: Discourse Quality Index)。
Type II:現実の政治コミュニケーションに合わせ、ストーリーテリングバーゲニング(交渉)など、合理主義に寄りすぎない形も熟議の一部として扱う方向。

指標として繰り返し出てくる「質の次元セット」
枠組みは違っても、よく観測される次元はかなり共通しています。ざっくり言うと:
4.1 包摂・平等
参加できるか(制度・技術・モデレーション)
発話量の偏り(声の分布、少数の支配)
「発話機会」は平等でも「実際の占有」が偏る問題(オンラインでも典型)
4.2 理由提示(正当化)と根拠の質
「理由があるか」だけでなく、意見へのエラボレーションや参照源(資料、他者、経験)の有無を数える設計が多い
4.3 相互応答(reciprocity / interactivity / uptake)
他者の発言に触れているか、質問しているか、反論を取り上げているか
DQI系では「反論の扱い」が中心だが、それだけでは鋭く測れないので独立指標化を提案する議論もある
4.4 尊重・市民性(civility / respect)
侮辱・人格攻撃の不在だけでなく、明示的尊重・配慮・「他者が尊重していない」と指摘するメタ発話まで拾う枠組みもある
4.5 建設性(constructiveness)
解決策を出す/既存案を改良する/利点欠点を比較する/妥協案を提案する、など段階づけ
4.6 内省・共感・誠実性(見えにくい要素)
ODMはここを明示的に入れる一方で、DQI再開発では「誠実性(真の意図)」は逐語録だけでは測りづらく、測定誤差が大きいので落とす、という判断も示されます


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