NISHIO Hirokazu[Translate]
台湾熟議勉強会
台湾における熟議の文化の発展
2026年4月17日のサイボウズラボ勉強会で西尾が解説した、ブロードリスニング本11章1節「台湾における熟議民主主義の発展」の内容を、勉強会での質疑応答とともに整理したものです。

前回 2026-02-20 サステナブル・ブランド国際会議2026振り返り勉強会をやって、サステナブル・ブランド国際会議 2026のスライドを見ながら話して派生的な話題を議論しているだけで1時間溶けたので、後で動画を振り返りながらまとめようと思っていたが色々忙しくてすっかりわすれていた
サステナブル・ブランド国際会議 2026のアーカイブ動画を見ようと思っていたが、公開期間を勘違いしていて見損ねてしまった、まあしたかない
好評だったみたいなのでまあいいか...
前回「余裕があれば6-Pack of Care、⿻ Plurality & 6pack.careの話をする」ということにしていて、余裕がなかったのでやらなかったんで今回やればよかったんだけど脳が一杯一杯ですっかり忘れていた
これだけでなく青山さんと一緒に話してきたデジタル政策フォーラム講演2025-11-19の振り返りもやった方がいいなと今気づいた
講演資料とかは公開しているのだけど高度に圧縮されてて、身近な文脈に着地させる部分がないからこういう会で話して質疑を記録するのが割と世界にとって有用な感じがある
今回は台湾における熟議の文化の発展について話そうと思う
1月に台湾に行った台湾視察2026
その後のブロードリスニング本執筆での「世界における熟議の流れについて書くべきだよね」という議論を踏まえて書いた11章1節「台湾における熟議民主主義の発展」について今回は解説する
最新の原稿はGitHubにある

台湾における熟議民主主義の発展
台湾では、20年以上も前から、市民が公共政策について討議する実験が行われてきました。
本章では、2002年の小規模な熟議実験から出発し、2010年代の オンラインとオフラインを組み合わせた vTaiwan、そして2024年の無作為抽出を取り入れたミニ・パブリックスに至るまで、台湾で熟議の仕組みがどのように改良され、受け継がれてきたのかを見ていきます。

2002年、台湾で初めての熟議の実験が行われる
実験の概要
テーマは「全民健保(国民健康保険)の給付範囲」でした。限られた財源の中で、どの医療項目を公費でカバーし、どこからを自己負担にするか — 2026年の日本でも通用しそうなテーマです。
この実験では20名の一般市民が、専門家の講義を受けてから討議を行いました。参加者は事前には健康保険制度をほとんど理解していませんでしたが、資料と専門家の説明により基礎知識を獲得し、公共利益の観点から理性的に政策を討議できました。
重要な発見1: 共有された基礎知識の効果
共有された基礎知識によって「討議の相手が知っていると仮定できる情報」が増え、議論の土台ができました。ランダムに集めた人をいきなりブレイクアウトルームに入れると、相手が何を知っているか探り合いに時間を取られてしまいます。全員が同じ知識を与えられていると分かることで、議論がスムーズになり、発言機会の格差も縮小しました。「自分は知識が足りないから口出ししたらまずい」という萎縮が減ったのです。
human Q: 事前に理解していなかったのがプラスに働いたのか?
nishio A: それは事前理解している人としていない人で比較実験をしないとわからないですね。

重要な発見2: 専門家と同じ結論にはならない
専門家の講義を聞いてから議論しても、専門家と同じ結論にたどり着くわけではないことがわかりました。参加者は、専門家が事実を説明しているのか、個人の価値判断を述べているのかを識別できていました。知識源としては尊重しつつも、「専門家が言っていることが正しい」とそのまま受け入れるわけではなかったのです。
human Q: その20人の参加者の議論スキルが高いのでは?
nishio A: ここは重要なポイントで、参加者は大学生です。ランダムな人口からサンプリングしたわけではなく、相応に頭のいい大学生であったというところは重要なポイントだと思います。

重要な発見3: 好循環の発生
参加者はこの熟議の後、以下の変化を示しました:
公共問題への関心が増加した
自分には公共問題を考える権利と能力があると認識するようになった
政策の議論を他者と行うようになった
公共的議論に一度参加することで理解と自信が高まり、さらに参加しやすくなるという好循環が発生したのです。

公民会議の広がり
この試みは「公民會議」(citizen consensus conference)と呼ばれ、2004〜2005年の間に台湾は公民會議を合計22回開催しました。この一連の実験が台湾における熟議文化の土台になりました。
human Q: 日本語に訳すなら「市民会議」の方が良いのでは?
nishio A: 「公民會議」は台湾の用語をそのまま漢字で書いただけです。日本で「公民会議」という言葉が使われているわけではありません。シチズン(citizen)のシティ(city)から行くと「市民」ですね。
human Q: 「国民」との違いは?
nishio A: 何のテーマについて議論するかによります。国のテーマなら国民、区のことなら区民。地理的範囲に依存しない抽象概念として束ねると「公民」になる気もします。ただ結局、一番流行った言葉が定着するだけでしょう。
human Q: 日本国籍を持ってない人を含めるかどうかの問題は?
nishio A: 「国民会議」だと国籍で区別される雰囲気が出ます。「市民」になると、住んでいるだけの人も含まれる感じが出てきますね。市には国籍のような「市籍」が存在しなくて「住民票」で住民かどうか判断しているので。

西尾の考察: 「素人の意見を集めてもゴミなのでは?」への反論
ここで書籍からは離れて、この実験を踏まえた考察を共有します。nishio
これは「人々の意見を広く聞く」アプローチに対する、よくある批判「専門性のないバカの意見を集めてもゴミなのでは?」に対するよいカウンターになるように思う
「人々」という言葉の解像度が低く、この中に2種類の人がいる
A: 専門的知識やテーマに対する具体的体験など「聞き手」Rが持っていない情報Iを持っている人
B: そうでない人(=聞き手Rと同等程度〜劣った量の情報しか持っていない人)
聞き手にとってAに対するブロードリスニングには「情報の獲得」というわかりやすいメリットがある
一方でBに対するブロードリスニングは「なんかみんなの意見を聞いた方がいいのかな〜」という感じの漠然としたメリットしかない
「予期せず良いアイデアが出てくる確率が0ではない」などと言われるが、そりゃ確率はゼロではない
問題は「良いアイデアかもしれないもの」を人間がレビューして「良いアイデアなのかそうではないのか」を判断するコストもゼロではないところ
リターンの期待値がコストを上回るかどうかが問題
そして、細かい制約を把握していない素人のアイデアは斬新に見えたとしても実現不能
>「レゴマインドストームで独創的な進み方をするロボットを作れ」という課題でマインドストームを使ったことのない素人とロボコン優勝・準優勝者(以下、玄人)とで比較をした論文。アイデアに関して写真と説明文でプレゼンテーションをして大学生たくさんが独創性を評価した結果、玄人と素人では独創性に差はなかった。しかし、素人のほとんどはそのアイデアを実現できなかった。
この問題に対して台湾の熟議の実験の「市民は適切な参加機会と知識支援があれば、公共利益の観点から理性的に政策を討議できる」という結論をみていると、別のアプローチがあるなと思う
まず専門家に対してブロードリスニングなり従来型のヒアリングなりAIインタビューなりをして情報を集める
その情報を市民に対して共有して、熟議の土台にする
human Q: 玄人の意見を素人にインプットするといい結果を生むのは、蓋然性がどれくらいあるか直感的にはわからない
nishio A: さっきの実験で結構明らかだと思います。玄人の主観的な意見をちゃんと無視して、事実の部分だけを見た上で玄人と違う意見を出すことが可能だった。単なる「玄人のコピー」が増えるわけではなく、「知識をちゃんと持っている議論主体」が増えるということになります。
human Q: AIとの問答を突破した人の意見だけ取り入れるというのはどうか?
nishio A: AIインタビューのような形で、AIとまずチャットして、その結果AIが「この話はこう整理すると提出する価値がある」と判断したものだけ上げてくるようにすれば、その構造にできると思います。
いどばたシステムのマニフェストに対する提案作成も同じ構図ですね
human Q: Bの側のメリットとして、どの政策を実行したら支持されるか推測できるのでは?
nishio A: ブロードリスニングの一つのメリットです。ただ、これを突き詰めるとポピュリズムに行きつくので、それで良いのかという問題はあります。
考えてみるとサイボウズの助言アプリは、助言を登録する際に専門家であるかどうかの選択肢がある
これは良い設計だったのだな
登録された助言が即座に全体共有される仕組みによって、専門性のない社員でも専門家がどう考えているのかを参照してから意見を書くことができる
どの程度そういう振る舞いが行われているかはわからない
サイボウズは自治体などに比べれば規模が小さいため、AI要約などが生まれる前から実現が可能な仕組みであった
ただ、「提出する」という形になっているため、話し合いながら整理されて出てくるプロセスがなく、心理的ハードルは高いかもしれません。専門家の情報を把握しているAIと1対1で話をして、心理的安全性がある状態でやり取りした結果として、AIが整理された提案を作ってくれる、という設計はありかもしれません。

vTaiwan誕生の流れ
ここからは大河ドラマだと思って聞いてください。vTaiwanがどうやって生まれたのか、遡って歴史を追いかけます。nishio
台湾零時政府 g0v(ガブゼロ)
vTaiwanの話で避けて通れないのがg0vです。2012年に4人のエンジニアのチームがハッカソンで政府の予算を可視化するサイトを作り、約25万円の賞金を獲得。彼らはその賞金を使って繰り返しハッカソンを開催することを決めました。ハッカソンの賞金でハッカソンを開催するという面白い選択です。
予算可視化サイトをホストするためにメンバーの一人Chia-liang Kao(clkao)が取ったドメインが g0v.tw 。台湾政府公式ドメイン gov.tw と1文字違いです。
human Q: 零時ってどんなニュアンス?
nishio A: 正確には言えませんが、「深夜零時」ということで、表の政府ではなく裏の政府的な感じのニュアンスがあると思います。
GPT5「零時」そのものの意味は「午前0時」です。
そのうえで、g0v / 零時政府という固有名になると、別のレベルの含意が乗ります。g0v の日本語ページでは、gov の “o” を “0” に置き換えた g0v は、「政府の役割をゼロから見直す」と同時に「0と1の世界であるデジタルネイティブ世代のビジョン」を表現していると説明されています。これは辞書的意味ではなく、団体側の命名解釈です。

g0vの思想は、政府のサイトが使いづらいときに「なぜ誰も改善しないのか」と嘆くのではなく、より良いものを作るアイデアがあるなら、許可を得ずにやってしまえというものです。これはCOBOLを開発したグレース・ホッパーの「謝罪することは許可を得ることより容易」に通じます。
g0vのモットー:「なぜ誰もやらないんだと嘆くより、まず自分がその"やらない人の一人"であることを認めよう。」

human Q: 完全にフィッシングサイトの作り方じゃないか
nishio A: 完全にフィッシングサイトの作り方です(笑)。ただし騙すことを意図しているのではなく、より使いやすい行政サービスを勝手に提供している。似た見た目のサイトを作って騙すのではなく、見た目は大きく違ってより使いやすくなるわけです。同じデータでもこんな使いやすい見た目が可能なんだとデモンストレーションした上で、政府側に「これマージしませんか?」と言う。
オードリー・タンも同じことを言っていて、道でワーワー叫ぶデモンストレーションではなく、技術的に「こういうことができる」とやってみせるタイプのデモンストレーションを好んでいると。

政府側の動き: 虛擬世界發展法規調適
一方、政府も手をこまねいていたわけではありません。2013年に政務委員の蔡玉玲(Jaclyn Tsai)が「虛擬世界發展法規調適」(仮想世界の発展に対応するための法規の調整)の推進を始めました。この時点ではまだ有識者会議的なもので、市民参加型ではありませんでした。

2014年の転機:ひまわり学生運動
2014年3月、中国との「サービス貿易協定」の審議をめぐり、300名を超える学生が立法院(国会議事堂に相当)を23日間占拠しました。与党が十分な審議を経ずに採決を強行しようとしたことが直接の引き金です。
ここでデジタル時代ならではのことが起きます。この出来事がリアルタイムでインターネット中継されたのです。
既存メディアの一部は学生を「暴徒」と呼んだが、ライブ中継によって実態が見えた
警察・学生双方の行動が常時見られている状態になり、暴力の抑止力になった
透明性が建設的な議論の土台になった
この中継は当時のUstreamやニコニコ生放送で行われた(ニコニコのプレスリリースも残っている)
human 中国本土でやったら戦車で排除されそう
nishio 戦車で排除するところをインターネット中継したら国際世論がすごいことになりそうですね。

インターネットは双方向なので、立法院の学生は台湾中の20の団体とビデオ会議で協議でき、占拠2週目にはRedditで「なんでも聞いて」企画を開催し749件のコメントがやり取りされました。
このインフラを支えたのがg0vです。イベント設営のノウハウを持ったCPRチーム(Cable, Power, Radio)があり、100人以上のメンバーが中継に関わりました。後にデジタル大臣になるオードリー・タンが350mのCAT-6ケーブルを敷設したエピソードも知られていますが、彼女一人の英雄譚ではなく、大勢の市民の力で実現されました。


もう一つの伏線:UberXと既存タクシーの対立
同じ2014年、数百台のタクシーが交通部前に集結して抗議。デジタル技術の発展に法制度が追いついていないという構造的な問題を象徴していました。この問題が後にvTaiwanでの市民参加型議論の最初の重要事例となります。
human 台湾、集結しがちですね
nishio 日本でも集結している人はいますが、冷めた目で見られがちです。台湾の話を踏まえると、有益な主張をしているならインターネット中継してもっと多くの賛同を集めればいいと思うのですが、そうなっていかない感じがしますね。

蔡玉玲がg0vハッカソンに来る
2014年12月、蔡玉玲が第11回g0vハッカソンに参加。持ち込んだ問いは「台湾のスタートアップはどうすればケイマン諸島に本社を置かずに済むか?」でした。
ハッカソンでの議論の結果、「この問い自体を一般市民に開いて議論するプラットフォームを作るべき」という結論に。会社法・税制・資本市場・規制が絡む複雑な問題であり、ハッカソンの場で答えを出すのではなく、国全体で合意形成する設計が必要だというわけです。
こうして一般市民が議論に参加するためのデジタル参加プラットフォームを作ろうというプロジェクトが立ち上がります。vTaiwan誕生のきっかけです。なお、この時点でオードリー・タンはまだデジタル大臣ではなく、民間コミュニティg0vの一参加者に過ぎませんでした。

vTaiwanの設計: Polisの活用
2015年、UberXの問題でvTaiwanが本格稼働します。いきなり政策案の賛否を問うのではなく、「事実→価値観」の順で意見を引き出す設計が行われました。
最初の10問の構成:
事実(経験)
Q1: 私は Uber を使って配車を呼んだことがある。
Q2: 私はタクシー運転手である。
Q3: 私は Uber のドライバーである。
価値観
Q4: 私は、ピーク時間帯には料金を柔軟に引き上げてもよいと思う。
Q5: 私は、ドライバーが複数の配車会社(プラットフォーム)から同時に仕事を受けられるようにすべきだと思う。
Q6: 私は、白タク(無許可営業車)を積極的に取り締まるのは交通部の責任だと思う。
法律上の争点
Q7: 私は、乗客を乗せる車両には明確な表示があるべきだと思う。
Q8: 私は、乗客を乗せるドライバーは全員が傷害保険(事故保険)に加入すべきだと思う。
Q9: 私は、Uber は営業している地域の政府に税金を納めるべきだと思う。
Q10: 私は、Uber プラットフォームの紛争解決の記録は交通部に報告されるべきだと思う。
法律上の争点の質問は、専門用語ではなく一般の参加者がわかる言葉で書き直されました。この翻訳をオードリー・タンとclkaoが担当しています。
最終的に1,326人が投票し、質問文は199件になりました。

オフライン討論と法改正
8月末に利害関係者の公開討論が行われました(YouTube動画がフルで残っています)。オードリー・タンがPolisの結果を解説し、交通部・Uber・タクシー会社がそれぞれの立場を説明。オンライン意見は全面賛成でも全面反対でもなく、「新規制が必要」「安全最優先」などの条件付き受容が多かったのです。
最終的に2016年10月に「汽車運輸業管理規則」が改正。「Uberは合法だ」でも「違法なUberを取り締まれ」でもなく、「違法なUberをどうすれば合法な存在にできるか」を生産的に議論し、制度化につなげることができた事例です。

vTaiwanのその後
この時に作られたvTaiwanはその後も繰り返し使われ、2015〜2018年の間に26件の議題が議論され、8割程度が法制度化につながりました。しかし、2019年以降の活動はあまり活発ではありません。

失速の要因
第一に、制度化による役割の変化。
2016年にオードリー・タンが政府側の人間(政務委員)になり、行政院の下にPDIS(Public Digital Innovation Space)が形成されました。コアパーソンが引き抜かれ、市民が運営するvTaiwan自体の役割は政府組織に吸収される形になりました。
第二に、ボランティアコミュニティの負担。
vTaiwanに参加するボランティアはイノベーター気質で、新しさに価値を見出す一方、安定した維持管理にはモチベーションを持ちにくい。ボランティアベースで継続しようとすると負担が高まります。しかもコアパーソンのオードリーが引き抜かれている状態です。
第三に、COVID-19。
政府が緊急対応を迫られ、時間をかけた合意形成プロセスは向かい風に。シビックテックコミュニティはマスク在庫可視化サービスなど別の形で活躍しました。エンジニアが「いいもの作った、どうだ!」という形で貢献する時期になり、オンライン熟議で政策を形成する雰囲気ではなくなったのです。
これは失敗ではない
ただし、これを失敗と見るべきではありません。vTaiwanで実践された手法は後のAlignment Assemblyなどに引き継がれています。また、議事録がすべてオンラインに残されていることで、11年後の2026年に日本の我々がその知見を読むことができています。インターネットとAIによる機械翻訳の進化によって、各国のプロジェクトは互いに参考にし合える網目状につながったものへと変化しつつあるのです。

まとめ: コミュニティを育むことの大切さ
2026年に台湾でデジタル民主主義の関係者に話を聞いて回った中で、MODAの副部長であるIsabel Houの言葉が印象に残っています:
> このような熟議的な形のコミュニケーションを、コミュニティを育むために採用していきたいです。コミュニティを育むことは、単にアドバイスを得ようとすることよりも、もっと大事なことだと考えています。
個別の事例で得られた市民提案やデジタルツールが大事なのではなく、市民参加の実験が繰り返されることで、参加した市民の公共問題への関心が増加し、好循環が生まれていく。これが2002年の最初の熟議実験から繰り返し観察されてきたことなのです。
専門家から知識をインプットした上で、専門性がなくても真剣に考えて議論する場を増やしていくこと。そしてそのデータがインターネット上に置かれて参照可能になっていくこと。これがやっていくべきことなのではないかと思っています。

質疑
human Q: 熟議が好きな人だけが集まった熟議コミュニティのバイアスが大きそう
nishio A: ミニ・パブリックスの手法では、台湾は全国民にSMSを送る仕組み(111番号)を使って20万人に招待を送りましたが、応募者はそもそも約2,000人。市民の1%未満しかリアクションしていません。偏ったコミュニティですよねという指摘は、それはそうです。ただし、紙と箱の投票でも若者の投票率が低いわけで、理想的な市民分布に沿った意思決定メカニズムを人類はまだ持っていません。
human Q: 日本語版g0vとして、国会と同じ内容を議員じゃない人が勝手に熟議したらどんな結論になるか気になる
nishio A: 大学生でも中学生でも高校生でもどんどんやって、議論の結果がオンラインで参照可能になるといいですね。熟議プラットフォームの維持運営コストが高いところが現状の課題です。
human Q: この本は日本の話も書いてあるのか?
nishio A: 基本的に2024年から2026年にかけて日本で何が起きたかを解説する書籍です。
日本は、新興政党であるチームみらいがブロードリスニングをやっているだけではなく、野党の国民民主が国会質問で首相にブロードリスニングの結果を突きつけたり、日本維新の会も党首自身が散布図を見ながらワイワイする動画を党チャンネルで公開するなど、与野党両方とも「ブロードリスニングを活用している」という状態にある。
この本を出すことで、2015年の台湾がvTaiwanでやったことがその後10年世界中から参照されたように、日本の事例が世界中から参照されるようになると期待している。
日本の事例がたくさんある中で、11章が世界の事例。台湾の他にイスラエルとパレスチナの議論をデジタルで支援する話なども扱っています。英語版もボランティアによってほぼ完成しており、GitHubで読める状態です。

"Engineer's way of creating knowledge" the English version of my book is now available on [Engineer's way of creating knowledge]

(C)NISHIO Hirokazu / Converted from [Scrapbox] at [Edit]