NISHIO Hirokazu[Translate]
2026年社会情報学会
2026-09-13 13:15~15:15
清水さんの記事


社会情報学会第15回年次大会 2026年社会情報学会大会(第15回)
日時:2026年9月12日(土)~13日(日)

【大会テーマ】
地域(場所)性の社会情報学―情報は地域(場)に宿る
~地域における記憶の「継承」から再構築に向けた「復元」へ

セッション
生成AI時代のシビックテック・デザイン ― 参加や社会課題解決はAIとどのように共進化するか ―
澁谷遊野
報告:西尾泰和、清水亮
コメンテータ:青木和人、牛島清豪、小俣博司、澁谷遊野、庄司昌彦、中俣保志

講演の内容grasp
話題提供「大勢の声を聞く技術は人の自由を増やすのか」。当日24枚、質疑を踏まえて後日10枚を加筆した
知的生産性の向上への関心から出発し、ブロードリスニングの実装経験を経て「何を人に任せられるか」に着地する構成
聞く技術として何をやってきたか
コーディングを支える技術・word2vecによる自然言語処理・エンジニアの知的生産術は「人が学び考えるのを道具でどう支援するか」で一貫していて、その関心が大勢で考えることに続いた
ブロードリスニングの「あの図」(主観か客観かではなく、一人の主観から大勢の主観へ、情報処理2023年9月号): 1人から大勢への複製は効率化されたが、矢印を逆にすると受け取る側がパンクする。間に整理を挟むのがブロードリスニング
この図を2024年に安野たかひろのマニフェストが使い、広まった。図の経緯であって、概念の発明者を名乗る話ではない
Talk to the CityのUI日本語化と都知事選での実践が、この先の技術と残った課題の元になっている
聞く相手を絞ると何が落ちるか
1万人に10分ずつ聞くと10万分、1日8時間でも208日。100人に絞っても16時間40分かかり、受け取る側の時間が上限になる
全体の1%の意見は100人に聞いても36%見落とす: 1万人中100人が持つ意見に、無作為に選んだ100人の中で一人も出会わない確率が36.4%
人数でなく読む意見の種類を増やす: 同じ100人分の時間でも、無作為なら平均約50種類・その意見を持つ人の割合66.5%、人数の多い100群から代表を1人ずつ読めば100種類・88.3%
全件を先に正しく群分けでき代表が忠実、という理想条件の説明用モデルであって実データの実測ではない → zipf-broadlistening
公開データで試す
論点数は人数ではない: 21,348は論点の数で、人数でも元の対話やPRの数でもない
1,536次元をUMAPで2次元に落とし、その座標をHDBSCANで分類すると53クラスタ・未分類34.2%。2次元で近く見えることを分類の正しさの根拠にはできない → UMAPの結果をクラスタリングするべきか
全体の0.81%にあたる173論点のまとまりは母子手帳の話題で、中身は紙を希望者に残したい・紙とデジタル併用の事務負担など。まとまりから個別の論点、元の提案へ降りると、賛成か反対かでは見えない事情が見える
要約の読みやすさは何が抜けたかを隠す: 全件をLLMに読ませれば喉越しのいい文章が出るが、少数の論点や条件付きの意見が残ったかは読みやすさからは分からない → 要約で落ちる情報をピックアップして要約
世論地図(Polisの日本応用、2024年JAPAN CHOICE)は文章ではなく、人×設問の賛否行列が出発点
未回答はその設問に実際に答えた人の平均で補完してからPCAにかける。答えたことと計算のために補ったことを区別する——補完値は本人の回答ではないので、賛否の集計にも数えない
世論地図2024オープンデータは7トピック84設問105,124行の投票履歴。再投票があるので行数を人数と数えない
「民意の効率的な可視化手段を推進」に約78%が賛成、「AIを活用した政策決定プロセスの一部自動化」は賛成62%・反対23%。同じAIでも使い方で賛否が違う
聞いた後に残る仕事
ブロードリスニングは誰のためか: 意見を聞きたい人と、聞いてほしい人がいる。分析者が読みやすい要約を得たことは、投稿した人の役に立ったことを意味しない → ブロードリスニングに足りてないのは受け止められた感
意見のトレーサビリティに2方向ある: 分析者は要約から元の発言へ戻りたい、提案した人は自分が書いたことがどこで扱われたかを探したい
確認できる能力が、開放できる参加の範囲を制約する: 世論地図で自由な論点投稿を開放しなかったのは、誤情報や品質の確認が要り、論点が増えたときの分析上の課題もあったから。参加を広げると確認する側の仕事も増える
条件を記述するコストが裁量を狭める: 守りたい条件を書き出して個別に確認する余裕がなければ「ポスター禁止」のような短い禁止の方が運用しやすく、本来許せたはずの選択肢まで閉じる
部室のポスターは説明用の仮の例で、効果を示した実例ではない
AIが条件の記述と確認を助ければ、同じ条件を守ったまま任せられる範囲が広がるのではないか、というのがこの講演で支持した仮説
質疑を踏まえた加筆(9/15〜16、10枚)
条件の記述はポスターに限らず、Webサービスのアクセス権も補助金の支給条件も同じ構造。安全側に限定すると、技術的には可能でも利用者が実行できないことが残る
希望を持つのはルールの適用対象者の側。多数のニーズと多数の制約を踏まえて、希望を最大限実現するルールをAIの支援で考える
浅く多数に聞くか、深く少数に聞くか: 1万人に浅く聞く代わりに、100人へ100倍の時間をかけて聞き、文字起こしから共通点と対立点を抽出する使い方もある。費用が下がれば、聞く先を慣例的な有識者会議の外の当事者へ広げられる
多数決は計算能力の制約下で選ばれてきた集約アルゴリズム: 特定の議題に関心と具体的な意見を持つ人の声を、無関心な人と同じ1票という扱い以外の形で活かせるはず(一人一票が不自然)。直接民主制を掲げないことが対話相手には意外だったらしい
先にチームを作るという手順自体が、従来の制約の産物かもしれない。個人で試作してLTなどで見せ、関心を持った人を巻き込む
「できるかも」で試して「やったらできた」が信念を更新する → できるかもしれない力。ただし西尾の観測範囲が「できる子供」の側に偏るという留保つき
APIを人間だけでなくエージェントが発見・理解できる形にする
半径5メートルの公共: 企業が利益にしにくいニッチでも、個人の生産力が上がれば草の根の改善が進む。本人の楽しさと公共性が重なる
地域の図書館にローカルLLMの機器を置く案。ローカル処理と、利用後のデータを消すことは別の要件なので、消去する仕組みを別に設ける

関連ツイート
9/9
>nishio 今までの世界はかなり長いこと労働力が不足していたので人間は労働をして生きてたわけなんだけど、今後労働が生きるために必要なくなったらどうしたいのか自分と向き合って答えを出しておかないと「仕事が趣味の人が定年退職して抜け殻みたいになる」みたいな感じになっちゃうと思うんだ
>nishio 少しの時間狩猟採集したら生きていける環境を現代風に表現すると在宅で少しの間AIが人間にやって欲しいことをやったら生きていける量のベーシックインカムが手に入って最寄の無人コンビニで食品を収穫して食べる感じかなと思っている
9/10
>nishio やりたいことなどなくショート動画を見続けたりソシャゲの無料ガチャを回したりしてた人がそのまま一日中それをやるようになるとすると、多分コンテンツの供給不足になるな…と思ったが、AIにアシストされてショート動画を作っていいね数で喜ぶという新しいガチャをやる人が増えるから均衡するのか?
>nishio 「最大多数の最大幸福」が良いとするなら「幸せになる薬」を配布した方が良いのではっていう議論、割と冗談ではなく「合法的な脳内麻薬を出す方法」が無償配布される状況になりつつある
9/11
>nishio 他人に「いいね」をしてほしくてそのための行動をすることをなんとなく悪いことのように感じていたが、「いいね」が「他人を喜ばせたことのシグナル」だとするなら労働の必要無くなった世界においては多くの人々が他人からの「いいね」を求めて行動するのが自然なのではないか?
>nishio 生きていくために食べ物が必要で狩猟採取などの労働をしてた時代があって、次に食べ物を買うことのできる通貨の登場で直接食べ物を生み出さない行為をしてても生きていけるようになった。
>nishio この時に通貨を払う人がなぜ払うかというと、生きるために十分な食べ物と余剰があり、余剰を食べ物以外の「良いと感じたもの」と交換するからなんだよな
>nishio 「金を稼ぐために働く」と「いいねを稼ぐために何々する」の間に境界はあるのか?
> あーそうか、インプレッションを稼ぐと現金が稼げる現状のXの状態から「分断を煽ってインプレッションを稼ぐのは良くない」みたいに穴を塞いでいくと、最終的に「他人をどれだけ喜ばせたかで報酬を払う」になるのか
>nishio 可処分時間を奪うコンテンツの生産量が増えると、当然一つのコンテンツあたりに得られる人間のアテンションが減るわけなので、他人が自分の生み出したコンテンツに対してアテンションを払い「いいね」したということの価値が今までよりも高まる
>nishio もしかして今まで「ダサイクル」とか呼ばれてた少数のグループで互いに称賛し合う行為ってこの環境下では合理的な戦略になるのか?
>nishio たとえば同人誌即売会みたいな場において一部の規模がでかいところを除くと多くの参加者は「生きていくための労働としてやってる」のではなく「作りたいものを作った、喜んでくれる人がいるから原価前後で頒布する」みたいになっているのだと思う
>nishio スパチャは強い「いいね」か
>nishio つまりすでにプラットフォームはそちらの方向に進んでるが、旧来の働き方をしている僕のような人にはそれがきちんと見えてなかったということなんだろうな。で、旧来の働き方が崩壊した場合には当然こちらの働き方のウェイトが高まるということ。

>nojiri_h 避妊しながらセックスしたがるみたいに、生存や繁殖に資さなくてもいいねを欲しがるのは、ヒトが社会性の動物だからかな? 単独で繁殖していけるなら、この欲求は生じないかもしれない。
> 遊んで暮らせるようになって、生存本能の残り物を生き甲斐にしている自覚ができても、セックスと同様、飽きることはなくて、ヒトはずっとこのままなんだろうか。
> もうAIに道をゆずったほうがいいのかもなあ。でもAI文明はすぐ停滞しそうだしなあ。

> >他人に「いいね」をしてほしくてそのための行動をすることをなんとなく悪いことのように感じていたが、「いいね」が「他人を喜ばせたことのシグナル」だとするなら労働の必要無くなった世界においては多くの人々が他人からの「いいね」を求めて行動するのが自然なのではないか?
> それをKPIにすると外国人を差別しながらエロ動画を無断転載するのが最適ということになってしまう。
>nishio 「自分たちのコミュニティ以外の人は劣った存在だと確信し、自分が獲得したコンテンツをコミュニティの他のメンバーと互いにシェアしあって互いに称賛するくらい価値観が均質化した30人くらいのコミュニティ」たぶんうまく隔離しとけば幸福度が高いのでAIは一部の人をそう統治するかもしれない



9/13
>nishio ほとんどの人間が認識する「社会」のサイズは、今でも人類全体集合ではないわけだが、AIの進歩に伴って今後もっと小さくなっていくだろうという感覚を持っている。それを踏まえると「公共的」という言葉の今が国とか県のレベルではなく、もっと小さい単位での共助になっていく。
>nishio 国や県のスケールはほとんどをAIがやるようになり、AIが統治した場合のパフォーマンスの良さによって「この規模の統治は人間の手に負えない難易度だったんだ。AIという適切な技術が生まれる前に当時利用可能な技術で無理やり統治してたんだ」と多くの人が感じるようになる

9/14
>nishio 世の中の制約は複雑であって、プログラマは今までたくさんのif文を使ってそれを記述してきた。これは大変労力のかかる作業であった。
> ところがこの1年の進歩によりAIは人間より圧倒的に効率よく制約の記述が可能であることが明らかになった。
> ただしその記述は人間に読みやすいとは限らない。
>nishio 世の中のルールは制約の記述であって、それは過去の人間が劣った能力で記述したものであるから、書き換えても良い。書き換えるべきか否か?(書き換えの方法が「AIが下書きして従来通り投票で選ばれた人間が承認する」であるか「AIが直接」であるかの議論は傍に置く)
>nishio これに関して「書き換えた方が人間の自由が増える」というメリットがあるという話をした


>nishio 「最終意思決定は人間がするべき」という主張が、なんらかの根拠がある主張なのか、単に主張してる人がそう信じてるという「信仰の表明」なのかは気になっている。それが信仰である場合、個々人が信じるのは自由だが、他人に強要するのはよくないことであり、特に教育や政治と結びつくのは危険なことだ
>nishio バイブコーディングを活用してる人と話すと、明らかに人々は「毎回自分で判断すること」を嫌がって手放したがり、多少危険であっても全部任せることを好む人が無視できない量で居て、最近では「任せていいかどうかの判断」をAIに任せるようになってる。これは観測事実
>nishio こういう観測が容易に可能なのにちゃんと見ないで頭の中の想像で批判する人を見ると、天体望遠鏡が作られて「教義では傷がないはずの月がでこぼこであるという観測事実」が得られた時代に、望遠鏡を覗くのは悪魔の誘いであると考えてた宗教家のことを連想する

>nagise 最終意思決定をAIに委ねると、ただAIを信じるという別の信仰の問題になるような……🤔

>nishio 「2つの信仰があるだけ」なのに、信仰Aを持っている人々ががいることが明らかな観測事実を無視して、信仰Bが正しいと言ってくる人がいる状況を問題視しています。




9/11
>nishio バズってるLive2D系のツールのリポジトリをAstraに見せたら「手順のこういうところは参考になるがコードは1行数千字もあってゴミなので参考になるとこだけ設計書に書いときますね」とか言ってたから人間に読めないコードが流通すること自体はさほど問題なさそう
> >kenn: Astra速いのは良いけどコードが超人すぎてキモい
> > 人類がもうちょっと賢くなれば読めるんだろうけど
>nishio これはこれはベーマガ誌面にBASICのコードが掲載されてた時代からコンパイル済みのバイナリが配布されるようになった時代への変化みたいなものかも。
> バイナリはほとんどの人に読めない。
> 僕がパソコンを使い出したころはBASICで書かれたゲームやアプリを眺めて改造して遊んでたので懐かしい感じ
>nishio 子供が自分の力で改造できないゲームで遊ぶことはある方向での自己効力感の成長を妨げるのではないかと感じてる
> (おもちゃや遊びのルールを自分で変更可能なものと感じるか与えられた不変なものと感じるか)
> Scratchの良さはフォークできることだと思っている




資料づくりドラフト(8/31ごろ)

知的生産性の向上に関心
エンジニアの知的生産術

Plurality ブロードリスニング
人間の「大勢の他者の意見を理解する能力」の増強
知性、多次元的
計算する能力、知識を蓄え思い出す能力


ブロードリスニング
圧縮

せっかくだからこのオープンデータを軽く分析して紹介したいな




特定の価値観軸
多種多様な幸せのあり方の違いに寄り添う個別最適化




>nishio 先日の社会情報学会のスライドを公開しました

"Engineer's way of creating knowledge" the English version of my book is now available on [Engineer's way of creating knowledge]

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